純米酒と吟醸酒の違いは「原料」と「造り方」
「純米酒と吟醸酒は何が違うの?」
「純米吟醸酒は、どちらに分類されるの?」
日本酒初心者が迷いやすいポイントですが、結論はシンプルです。
純米酒と吟醸酒は、比較する基準が異なります。
- 純米酒は、米と米麹だけで造ることを示す分類
- 吟醸酒は、精米歩合や吟醸造りなどの条件を示す分類
つまり、純米酒は主に「原料」、吟醸酒は主に「精米歩合と製法」に注目した名称です。
そのため、両者は完全に別のグループではありません。米と米麹だけを使い、吟醸酒の条件も満たした日本酒は「純米吟醸酒」と呼ばれます。
味の傾向として、一般的な純米酒は米の旨味やコクを感じやすく、吟醸酒は華やかな香りと軽快な口当たりを楽しみやすいといわれます。
ただし、これは絶対的な違いではありません。純米酒にも軽快な商品があり、吟醸酒にも旨味のしっかりした商品があります。日本酒の味は、原料米、酵母、酸度、発酵方法、熟成期間、飲む温度などでも変化するためです。
まずは「純米は原料の条件、吟醸は精米歩合と造り方の条件」と覚えておくと、ラベルが読みやすくなります。
純米酒と吟醸酒の違いを徹底解説
純米酒と吟醸酒を正確に理解するには、原料、精米歩合、製法、香り、味わいを順番に確認することが大切です。
| 種類 | 使用原料 | 精米歩合 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| 純米酒 | 米・米麹 | 数値による要件なし | 米由来の旨味やコクを生かしやすい |
| 吟醸酒 | 米・米麹・醸造アルコール | 60%以下 | 吟醸造りによる華やかな香りと繊細な味わい |
| 純米吟醸酒 | 米・米麹 | 60%以下 | 純米酒の旨味と吟醸酒の香りを併せ持つ |
| 大吟醸酒 | 米・米麹・醸造アルコール | 50%以下 | より繊細で華やかな香りを目指して造られる |
| 純米大吟醸酒 | 米・米麹 | 50%以下 | 米だけで造る条件と大吟醸の条件を満たす |
① 原料の違い
純米酒の原料は、米と米麹です。仕込みには水も使いますが、ラベルの原材料名では通常、米と米麹が表示されます。
醸造アルコールや糖類などを原料として使用しないことが、純米酒の基本的な条件です。
一方、吟醸酒は米、米麹、水に加え、醸造アルコールを使用できます。醸造アルコールとは、でんぷん質や糖質を発酵させ、蒸留して造られたアルコールです。
醸造アルコールを加える目的は、単に酒の量を増やすことではありません。香りを引き出したり、味を軽快に整えたり、後味のキレをよくしたりするためにも使われます。
「醸造アルコール入りは品質が低い」という見方は正確ではありません。吟醸酒や大吟醸酒のなかには、香りと味のバランスを整えるため、計算して醸造アルコールを使用している商品があります。
なお、米と米麹だけを使って吟醸造りを行ったものが純米吟醸酒です。純米酒と吟醸酒の特徴を併せ持つため、初心者にも選びやすい分類といえます。
② 精米歩合の違い
精米歩合とは、玄米を削った後に残った米の割合です。
たとえば精米歩合60%なら、玄米の外側を40%削り、中心部分を60%残していることになります。数字が小さいほど、米を多く削っているという意味です。
吟醸酒と純米吟醸酒は精米歩合60%以下、大吟醸酒と純米大吟醸酒は50%以下であることが条件です。
一方、純米酒には精米歩合の数値による要件がありません。元記事では「純米酒は70%前後が多い」と説明されていましたが、商品によって数値は大きく異なります。
米の外側には、たんぱく質、脂質、ミネラルなどが多く含まれています。これらは発酵に必要な成分ですが、多すぎると雑味の原因になる場合があります。そのため、吟醸酒では米を多く削り、雑味を抑えた繊細な酒質を目指します。
ただし、精米歩合が低いほど必ずおいしいわけではありません。
米をあまり削らず、米由来の複雑な旨味を生かす日本酒もあります。精米歩合は品質の順位ではなく、蔵元がどのような味を目指したかを知る数字です。
③ 製法の違い
吟醸酒は、国税庁の表示基準で「吟醸造り」によって造ることが条件とされています。
吟醸造りに法律上の細かな工程表があるわけではありませんが、一般的には、よく磨いた米を使い、低温で時間をかけて発酵させる方法です。
低温でゆっくり発酵させると、リンゴ、バナナ、メロンなどを思わせる「吟醸香」が生まれることがあります。
少しうんちくを加えると、吟醸香の代表的な成分には、リンゴのような香りに関係するカプロン酸エチルと、バナナのような香りに関係する酢酸イソアミルがあります。同じ吟醸酒でも、使用する酵母や発酵管理によって香りの方向性が変わります。
純米酒は、吟醸造りを必須としません。伝統的な生酛造りや山廃造りを使い、酸味や旨味のしっかりした酒質に仕上げる商品もあります。
生酛や山廃だから必ず濃厚、吟醸だから必ず淡麗とは限りません。製法は味を予想する材料の一つとして考えましょう。
④ 香りと味わいの違い
一般的な純米酒は、米由来の甘味や旨味、適度な酸味を感じやすい傾向があります。
冷酒だけでなく、常温や燗酒に向く商品も豊富です。温めることで米の旨味が広がり、煮物、焼き魚、鍋料理などと調和しやすくなります。
吟醸酒は、華やかな香りと繊細な口当たりが特徴です。よく冷やして飲むと輪郭がすっきりし、吟醸香を楽しみやすくなります。刺身、白身魚、冷菜など、味付けが繊細な料理と合わせやすいでしょう。
ただし、「純米酒は重い」「吟醸酒は甘い」と決めつけると、銘柄選びに失敗することがあります。
辛口の純米酒、旨味の豊かな吟醸酒、香りを抑えた食中向け純米吟醸酒など、実際の味はさまざまです。ラベルだけでなく、蔵元の商品説明や甘辛、酸度、推奨温度も確認すると選びやすくなります。
⑤ 純米吟醸酒との関係
純米吟醸酒は、純米酒と吟醸酒の中間ではありません。両方の条件を満たしている日本酒です。
使用原料は米と米麹で、精米歩合は60%以下。さらに吟醸造りを行い、固有の香味と良好な色沢を備えることが求められます。
純米大吟醸酒も同じ考え方です。米と米麹だけを使い、精米歩合50%以下などの大吟醸酒の条件を満たしています。
日本酒の分類全体と、特別純米酒や本醸造酒を含めた違いを確認したい方は、「日本酒の種類一覧|純米酒・吟醸酒の違いをわかりやすく解説」も参考になります。
初心者でも失敗しない選び方
純米酒と吟醸酒は、どちらが上という関係ではありません。香り、味の濃さ、料理、飲む温度から選びましょう。
① 華やかな香りなら吟醸酒を選ぶ
リンゴやメロンを思わせる香りを楽しみたい人には、吟醸酒や純米吟醸酒が向いています。
日本酒特有の米の香りやアルコール感が苦手な人でも、香りの華やかな吟醸酒なら飲みやすく感じる場合があります。
最初は5〜10℃程度に冷やし、口の広がったグラスへ少量注ぐと香りを確認しやすいでしょう。ただし、冷やしすぎると香りや甘味を感じにくくなるため、少しずつ温度を上げながら試すのもおすすめです。
② 食事と合わせるなら純米酒を選ぶ
米の旨味を料理と合わせたい人には、純米酒が候補になります。
焼き魚、煮物、鍋料理、味噌を使った料理など、旨味のある和食と合わせやすいのが魅力です。酸味のしっかりした純米酒なら、肉料理やチーズにも負けにくいでしょう。
純米酒は冷酒だけでなく、常温や燗酒にも向いています。温度を変えると味の印象が大きく変わるため、1本で複数の飲み方を楽しめます。
③ 軽快さを求めるなら吟醸酒を選ぶ
すっきりした後味を好む場合は、吟醸酒の商品説明から「淡麗」「軽快」「キレがある」と書かれたものを探しましょう。
ただし、吟醸酒だから低アルコールとは限りません。日本酒のアルコール度数は13〜16度前後が一般的で、吟醸酒にも同程度のアルコールが含まれます。
軽い口当たりで飲む速度が上がることもあるため、少量ずつ味わい、水も一緒に飲むことが大切です。
④ コクを楽しむなら純米酒を選ぶ
日本酒らしい米の味や飲みごたえを求める場合は、純米酒が向いています。
「芳醇」「濃醇」「旨口」「山廃」「生酛」といった表記がある商品は、コクや酸味を感じやすい傾向があります。
反対に、すっきりした純米酒を探すなら「淡麗」「軽快」「低アルコール」などの説明に注目してください。純米酒という名称だけで味を決めつけないことが、失敗を防ぐコツです。
⑤ 迷ったら純米吟醸酒を選ぶ
純米酒の旨味と吟醸酒の香りを両方試したいなら、純米吟醸酒が選びやすいでしょう。
純米吟醸酒にも、華やかなタイプ、食中酒向け、辛口、微発泡感のあるタイプなどがあります。最初は720mlより小さい容量や、飲み比べセットを選ぶ方法もおすすめです。
ラベルでは、次の順番で確認すると選びやすくなります。
- 純米・吟醸などの種類
- 原材料名
- 精米歩合
- アルコール分
- 甘口・辛口や香りの説明
- 推奨されている温度
日本酒度は甘辛を予想する目安ですが、日本酒度だけで味は決まりません。酸度が高いと、同じ日本酒度でも引き締まって感じることがあります。
純米酒・吟醸酒おすすめ3選
純米酒と吟醸酒の違いを感じやすく、初心者でも選びやすい3銘柄を紹介します。
① 作 恵乃智 純米吟醸(三重)
清水清三郎商店が手がける「作」シリーズの純米吟醸酒です。
作シリーズは、やわらかな味わい、キレのよさ、透明感を特徴としています。純米吟醸酒なので、米と米麹だけで造る純米酒の条件と、吟醸酒の条件をどちらも満たします。
華やかな香りと軽快な口当たりを楽しみやすく、純米酒と吟醸酒の関係を理解する最初の一本に向いています。
冷蔵庫で冷やし、ワイングラスへ少量注いで香りを確認してみましょう。刺身、カルパッチョ、蒸し鶏など、味付けの軽い料理と合わせやすいタイプです。
② 天狗舞 山廃仕込純米酒(石川)
車多酒造が造る、山廃仕込みの純米酒です。
山廃仕込みは、酒母造りの一部を自然な微生物の働きに任せながら、時間をかけて力強い酵母を育てる伝統的な製法です。
天狗舞の山廃仕込純米酒は、米の旨味、コク、酸味を楽しみやすく、吟醸系とは異なる純米酒の魅力を体験できます。
最初は常温で飲み、次にぬる燗へ温めると味の変化が分かりやすいでしょう。焼き魚、煮物、すき焼き、発酵食品など、旨味の強い料理と好相性です。
③ みむろ杉 純米吟醸 山田錦(奈良)
奈良県三輪の今西酒造が造る純米吟醸酒です。
原料米には山田錦を使用し、精米歩合60%、アルコール度数15度で仕上げられています。穏やかな香りとフレッシュな味わいのなかに、米の旨味を感じられるバランス型です。
吟醸香だけが前面に出るタイプではなく、食事と一緒に楽しみやすい点が特徴。純米酒と吟醸酒の長所をバランスよく体験したい人に向いています。
冷酒で飲み始め、温度が少し上がったときの香りや旨味の変化を比べるのがおすすめです。白身魚、だし巻き卵、鶏肉の塩焼きなどと合わせやすいでしょう。
商品の原料米や数値、販売状況は変更される場合があります。購入時には商品ラベルと蔵元の案内を確認してください。
違いを知ると日本酒はもっと楽しくなる
純米酒と吟醸酒は、どちらが優れているかを比べるものではありません。原料と造り方に注目した、異なる分類です。
今回のポイントをまとめると、次のようになります。
- 純米酒は米と米麹だけを原料とする
- 吟醸酒は精米歩合60%以下で、吟醸造りを行う
- 純米酒に精米歩合の数値要件はない
- 大吟醸酒と純米大吟醸酒は精米歩合50%以下
- 純米吟醸酒は純米酒と吟醸酒の両方の条件を満たす
- 精米歩合の数字が小さいほど、必ずおいしいわけではない
違いを体験するなら、冷やした純米吟醸酒と、常温または燗にした純米酒を飲み比べてみましょう。
純米吟醸酒では香りと軽快さ、純米酒では米の旨味や温度による変化を確かめます。同じ純米酒でも、冷酒と燗酒では印象が変わるため、1本を温度違いで比較する方法もおすすめです。
日本酒を選ぶときは、名称だけで味を決めつけないことが大切です。
ラベルから原料と精米歩合を確認し、商品説明から香り、甘辛、推奨温度を読み取ると、好みに合う一本を見つけやすくなります。
よくある質問
純米酒と吟醸酒はどちらが高級ですか?
純米酒と吟醸酒は分類の基準が異なるため、名称だけで上下は決まりません。価格は原料米、精米歩合、製造工程、生産量、熟成期間などによって変わります。
純米吟醸酒は純米酒ですか?吟醸酒ですか?
両方の条件を満たす日本酒です。米と米麹だけを使い、精米歩合60%以下で吟醸造りを行ったものが純米吟醸酒に分類されます。
醸造アルコールを使用した日本酒は品質が低いのですか?
一概にはいえません。吟醸酒では、香りを引き出し、味を軽快に整えるために醸造アルコールを使用することがあります。原料表示と味の好みから判断しましょう。
精米歩合は低いほどおいしくなりますか?
低いほど多く精米していることを示しますが、おいしさの順位ではありません。高精白は繊細な酒質を作りやすく、米をあまり削らない酒は複雑な旨味を生かしやすいという違いがあります。
初心者には純米酒と吟醸酒のどちらがおすすめですか?
華やかな香りや軽快さを好むなら吟醸酒、米の旨味やコクを求めるなら純米酒が候補です。迷った場合は、両方の条件を満たす純米吟醸酒から試すと違いをつかみやすいでしょう。
関連記事
- 日本酒の選び方|初心者でも失敗しないポイントを解説
甘辛、香り、精米歩合、料理との相性から、自分に合う日本酒を選ぶ方法を紹介します。 - 日本酒の美味しい飲み方|冷酒・熱燗の違いとおすすめ温度
冷酒、常温、燗酒によって香りや旨味が変わる理由と、適した温度を解説しています。 - 日本酒の適温とは?冷酒・常温・熱燗の最適温度を解説
雪冷え、花冷え、ぬる燗、熱燗など、日本酒特有の温度表現を確認できます。 - 辛口の日本酒おすすめランキング|キレのある人気銘柄を厳選
甘さを抑えた日本酒や、食事に合わせやすいキレのある銘柄を探している方におすすめです。 - 甘口の日本酒おすすめランキング|飲みやすい人気銘柄を紹介
フルーティーな香りや、やわらかな甘味を楽しめる日本酒を紹介しています。 - 初心者におすすめの日本酒10選|飲みやすくて失敗しない銘柄
日本酒に慣れていない人でも選びやすい銘柄と、飲み方のポイントが分かります。 - 日本酒のアルコール度数は?他のお酒との違いも解説
日本酒の一般的な度数と、原酒や低アルコール日本酒の違いを整理した記事です。 - 日本酒に合うおつまみおすすめランキング|相性抜群の食べ物
純米酒や吟醸酒の味に合わせて、おつまみを選びたい方の参考になります。
お酒の関連した情報はこちらの記事もご覧ください。

