ビールの違いは「発酵方法」で決まる
「ビールは種類が多すぎて分からない」「ラガーとエールは何が違うの?」と感じる方は少なくありません。
結論からいうと、ビールは発酵方法によって大きく次の3系統に分けられます。
- 下面発酵で造るラガー系
- 上面発酵で造るエール系
- 自然発酵などを用いるその他の系統
日本で広く飲まれているすっきりしたビールの多くはラガー系です。一方、クラフトビールでよく見かける、香り豊かな商品にはエール系が多くあります。
ただし、「ラガーは苦い」「エールは甘い」と単純に分けることはできません。苦味や甘味は、発酵方法だけでなく、ホップや麦芽の種類、配合、製法によっても変わるからです。
まず発酵方法を理解し、その後にピルスナー、IPA、スタウトなどのビアスタイルを知ると、ビール選びが分かりやすくなります。
ラガーとエールの違いを徹底解説
ラガーとエールの基本的な違いは、使用する酵母と発酵温度です。ラガーは比較的低い温度で発酵させ、エールはラガーより高い温度で発酵させます。
両者の違いをまとめると、次のようになります。
| 分類・スタイル | 主な発酵方法 | 味や香りの傾向 | 初心者向けの選び方 |
|---|---|---|---|
| ピルスナー | 下面発酵・ラガー系 | すっきりした味と爽快なのど越し | 食事に合わせたい人向け |
| ヘレス | 下面発酵・ラガー系 | 麦の甘味が穏やかで苦味は控えめ | 苦いラガーが苦手な人向け |
| シュバルツ | 下面発酵・ラガー系 | 色は黒いが、後味は比較的軽快 | 香ばしさを軽く楽しみたい人向け |
| ペールエール | 上面発酵・エール系 | 柑橘系の香りと程よい苦味 | クラフトビールの入門向け |
| IPA | 上面発酵・エール系 | ホップの香りと苦味が強い | 苦いビールを楽しみたい人向け |
| スタウト | 上面発酵・エール系 | コーヒーやカカオのような香ばしさ | 黒ビールのコクを楽しみたい人向け |
| ヴァイツェン | 上面発酵・エール系 | バナナのような香りと柔らかな口当たり | 苦味が苦手な人向け |
| ベルジャンホワイト | 上面発酵・エール系 | 柑橘やスパイスを思わせる爽やかな香り | フルーティーな味が好きな人向け |
| セゾン | 主に上面発酵・エール系 | 爽やかな香りとドライな後味 | 暑い日や食事中に向く |
| ランビック | 主に自然発酵 | 独特の酸味と複雑な香り | 個性的な味を試したい人向け |
ラガービールの特徴
ラガーは、低い温度で時間をかけて発酵させる下面発酵のビールです。雑味が少なく、すっきりした味わいになりやすいため、世界中で広く飲まれています。
日本の大手メーカーが販売する定番ビールの多くは、ラガー系のピルスナーです。爽快なのど越しとキレがあり、揚げ物、焼き肉、餃子など味の濃い料理にも合わせやすいでしょう。
一方で、商品によってはホップの苦味や炭酸を強く感じることがあります。苦味が苦手な方は、ラガーの中でも「まろやか」「軽やか」「麦の甘味」と説明されている商品を選ぶのがコツです。
なお、ラガーという名前は、ドイツ語で貯蔵を意味する言葉に由来します。低温で熟成させる製法と関係しており、味そのものを表す言葉ではありません。
エールビールの特徴
エールは、ラガーより高い温度で発酵させる上面発酵のビールです。酵母が生み出す果実のような香りを感じやすく、ビアスタイルによって味が大きく異なります。
代表的な種類は、ペールエール、IPA、スタウト、ヴァイツェン、ベルジャンホワイトです。ゆっくり香りを確かめながら飲む家飲みや、クラフトビールの飲み比べに向いています。
ただし、「エールは苦くない」という説明には注意が必要です。ベルジャンホワイトやヴァイツェンは苦味が穏やかな傾向にありますが、IPAのように非常に苦いエールもあります。
香り豊かなビールを試したい場合はペールエール、苦味を避けたい場合はヴァイツェンやベルジャンホワイトから始めると失敗しにくいでしょう。
その他のビールの種類
ラガーとエール以外には、空気中や醸造所に存在する微生物を利用する自然発酵ビールがあります。ベルギーのランビックが代表例で、一般的なビールとは異なる酸味や複雑な香りが特徴です。
また、発酵方法とは別の基準で呼ばれるビールもあります。
フルーツビールは、果物や果汁などを使ったビールの総称です。クラフトビールは、小規模な醸造所や個性的な製法・味わいを表す場面で使われますが、特定の発酵方法を指す言葉ではありません。
生ビールもビアスタイルではありません。日本では、熱処理をしていないビールを意味します。生ビールの中にもラガーとエールがあるため、「生ビール=ラガー」ではない点を覚えておきましょう。
さらに、日本の酒税法上の「ビール」「発泡酒」という区分と、ベルジャンホワイトなどのビアスタイルは別の分類です。副原料の種類などによっては、本格的なビアスタイルの商品でもラベル上は発泡酒と表示されます。
自分に合うビールの種類の選び方
ビールは種類の名前だけでなく、飲む場面や好きな味から選ぶと失敗しにくくなります。
① 飲みやすさで選ぶ
初心者や苦味が苦手な方には、ヴァイツェンやベルジャンホワイトがおすすめです。小麦を使用する商品が多く、柔らかな口当たりや果実を思わせる香りを楽しめます。
すっきりしたビールが好きなら、ピルスナーやヘレスが候補です。アルコールの重さが気になる場合は、商品ラベルでアルコール分も確認しましょう。
なお、アルコール度数が低くても苦味が弱いとは限りません。度数、苦味、香りは別々の要素として考えることが大切です。
初めての一本を具体的な銘柄から選びたい方は、「初心者におすすめのビール10選|苦くない飲みやすい銘柄を紹介」も参考になります。
② 飲むシーンで選ぶ
食事と一緒に楽しむなら、後味がすっきりしたラガーが合わせやすいでしょう。揚げ物や肉料理の脂を炭酸と苦味が流し、次の一口を食べやすくしてくれます。
ゆっくり香りを楽しみたい夜には、ペールエールやヴァイツェンが向いています。キャンプや暑い日の屋外なら、軽快なピルスナーやセゾンも選択肢です。
食後に少量を味わうなら、スタウトの香ばしさも楽しめます。チョコレートやナッツ、燻製料理などと合わせると、コーヒーやカカオを思わせる風味が引き立ちます。
③ 好みの味と香りで選ぶ
すっきりした味を求めるならラガー系、香りを重視するならエール系が基本的な目安です。
ただし、最終的にはビアスタイルまで確認しましょう。
- 苦味を避けたい場合は、ヴァイツェンやベルジャンホワイト
- 柑橘系の香りを楽しみたい場合は、ペールエール
- 強い苦味とホップ香を求める場合は、IPA
- 香ばしい味が好きな場合は、スタウトやシュバルツ
- 酸味や個性を楽しみたい場合は、ランビックやサワーエール
ビールの苦味を示す目安としてIBUが記載されている商品もあります。数字が大きいほど苦い傾向にありますが、麦芽の甘味や香りによって体感は変わります。IBUだけで味を断定しないことがポイントです。
種類別におすすめのビール3選
ここでは、ラガー、ペールエール、ベルジャンホワイトから、違いを比較しやすい3商品を紹介します。
① アサヒスーパードライ(ラガー系)
さらりとした飲み口と、後に味を残しにくいキレが特徴のビールです。よく冷やすと爽快感が引き立ち、唐揚げ、餃子、焼き肉など幅広い料理に合わせられます。
日本で親しまれているラガー系ビールの特徴を知る一本として選びやすいでしょう。苦味や炭酸が気になる場合は、食事と一緒に少量から試すのがおすすめです。
② よなよなエール(アメリカンペールエール)
カスケードホップによる柑橘系の香りと、麦芽の穏やかな甘味を楽しめるエールです。アルコール分は5.5%、苦味の指標であるIBUは35です。
香りを確認しやすいよう、缶から直接飲むよりもグラスへ注くのが向いています。ラガーとは違うエールの香りを体験したい方におすすめです。
苦味がまったくない商品ではありません。冷やしすぎると香りを感じにくくなるため、冷蔵庫から出した直後と、少し温度が上がった状態を比べても楽しめます。
③ 水曜日のネコ(ベルジャンホワイトエール)
大麦麦芽と小麦麦芽に、オレンジピールとコリアンダーシードを組み合わせたベルジャンホワイトエールです。柑橘を思わせる香りと甘酸っぱい味わいがあり、苦味は穏やかです。
一般的なラガーの苦味やのど越しが苦手な方でも試しやすいでしょう。サラダ、白身魚、鶏料理のような軽めの食事にも合わせられます。
日本の酒税法上は発泡酒に分類されますが、ビアスタイルはベルジャンホワイトエールです。税法上の品目と味の種類が必ずしも一致しないことが分かる一例でもあります。
ビールの種類を知ると楽しみ方が広がる
ビールは、発酵方法によってラガー系、エール系、その他の系統に大きく分けられます。
ラガーはすっきりした味わいの商品が多く、食事に合わせやすい点が魅力です。エールは香りや味の幅が広く、ペールエール、IPA、スタウト、ヴァイツェンなど多くのスタイルがあります。
覚えておきたいポイントは次の3つです。
- ラガーとエールの違いは主に酵母と発酵方法
- 発酵方法だけでは苦味や甘味を判断できない
- 実際に選ぶときはビアスタイルまで確認する
最初からすべての名前を覚える必要はありません。ラガー、ペールエール、ベルジャンホワイトなど、特徴の異なる商品を一本ずつ飲み比べると、自分の好みが分かりやすくなります。
飲酒は20歳になってからです。飲みやすく感じるビールでも、水や食事と一緒にゆっくり楽しみましょう。妊娠中や授乳中、運転前の飲酒は避けてください。
よくある質問
ラガーとエールではどちらが飲みやすいですか?
すっきりした味が好きならラガー、果実を思わせる香りや柔らかな口当たりが好きならエールが候補です。
ただし、IPAのように苦味が強いエールもあります。初心者はラガーのヘレス、エールのヴァイツェンやベルジャンホワイトなどから選ぶと試しやすいでしょう。
ピルスナーとラガーは同じですか?
ピルスナーはラガー系に含まれるビアスタイルの一つです。ラガーという大きな分類の中に、ピルスナー、ヘレス、シュバルツなどがあります。
日本の定番ビールにはピルスナータイプが多いため、ラガーとピルスナーが同じ意味のように使われることがありますが、厳密には分類の範囲が異なります。
エールビールは常温で飲むものですか?
日本の夏の室温は高いため、常温が適しているとは限りません。エールも基本的には冷やして飲みますが、冷やしすぎると香りが閉じやすくなります。
商品ごとの推奨温度を確認し、香りを楽しみたい場合は冷蔵庫から出して少し待ってから飲む方法もあります。
黒ビールはすべて苦くて重いですか?
色の濃さだけでは苦味や重さを判断できません。スタウトには濃厚な商品がありますが、ラガー系のシュバルツには比較的軽快なタイプもあります。
黒い色は主に焙煎した麦芽に由来します。コーヒーやカカオを思わせる香ばしさに注目して選びましょう。
クラフトビールはエールだけですか?
クラフトビールにはエールが多く見られますが、ラガー系の商品もあります。クラフトビールは発酵方法や特定の味を指すビアスタイルではありません。
クラフトラガー、ピルスナー、IPA、スタウトなど、多様な商品が造られています。
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